「SteamPal」とはどんなゲーム機なのか、発売日はいつ?

Steamを運営しているValveが「SteamPal」(コードネームNeptune)と呼ばれるゲーム機を開発中だという。

Valveのゲーム機と言えば「Steam Machine」や企画を担当した携帯ゲーム機「Steamboy」が記憶に新しい。

「Steamboy」のほうはその後「Smach Z」と名前を変え、クラウドファンディングでも1億円以上を募り成功に思えたが、延期を重ねついに今月会社が破産寸前と報じられ頓挫しそうな感じだ。

Valveとは別会社の出来事なのだが、Valve=ゲーム機と結び付けていい印象を持っていない人は多いだろう。

そんな中、SteamDB開発者が「ValveがSteamPalを開発中」とレポートし注目を集めている。

今回はその「SteamPal」について分かっている情報と私見を書こうと思う。

「SteamPal」はどんなゲーム機なのか

Ars Technicaによると、SteamPalは、コントローラーとタッチスクリーンを搭載したPCの一つと説明していることから、あくまでもゲーミングPCの派生としてのゲーム機であると解説。

さらにベータクライアントのアップデートでは以下の記述が含まれていたという

・コントローラーのバインド
・クイックアクセスメニュー
機内モード、Wi-Fi、Bluetoothなどの設定
・スリープやシャットダウンなど電源に関するメニュー

ここで興味深いのは「機内モード」「電源に関するメニュー」の記述があるということ。

SteamPalは携帯機に装備されるシステム設定になっており、PCに標準搭載されている電源メニューがあることから、”PC仕様の持ち運びできるゲーム機”と推測されているのだ。

さらにOSがWindowsではなく、Linux経由と報道されていることにも注目だ。

あまり知られていないかもしれないが、元々ValveはWindowsに依存しないLinuxベースの独自OS「SteamOS」を開発しそれを標準搭載させて2015年11月「Steam Machine」を市場投入している。

さらにWindows向けのゲームをLinux上でもプレイできるようにするためのオープンソースソフトウェア「Proton」を開発しており、WindowsやMacに頼らないこの分野にも明るい。

すでにリリースされているWindows版のゲームが、再開発なしでLinux市場に投入することが可能になったのも「Proton」の果たす役割が大きい。

その結果、Linux上ですぐにプレイが可能になるゲーム数は2020年5月27日現在で14,634にまで増加し、今後開発されるゲームの半分以上はローンチ後Linuxでも動くようになるという。

もちろん、Steamゲームをするために今の環境を完全に手放してこのゲーム機だけに頼ることは早計だが確実に歩みを進めていることは確かだ。

ほとんど見向きもされていなかった「SteamOS」搭載の新Steam Machineはこんな形で復活を遂げるのだろうか……。

Steamの強みを活かしたゲーム機

ポータブルWindowsゲーム機というと「GPD WIN 3」、「OneGx1 Pro」、「AYA NEO」などが発売されているが市場規模は小さい。

また今後Nintendo Switch Lite風のデザインを採用した「One xPlayer」やDellの持ち歩けるゲーミングPC「Concept UFO」も発売予定だがメジャーではない。

ゲーム機を発売する場合、会社はゲーム機そのものの機能を充実させないといけないのはもちろんだが、同時に発売されるソフトが充実していなければ意味がない。

これまで国内でもソフトの充実が叶わずに売れなかったゲーム機がいくつあっただろう。

考えてみればValveが開発したVRヘッドセット「VALVE INDEX」が売れ生産が追いつかなくなったのは『Half-Life: Alyx』のおかげだった。つまりソフトがハードを後押しした結果と言える。

Oculusも、2020年9月にUBIとVR部門でパートナーシップを締結し専用タイトルを抱えたのが売り上げにつながっている。

そういう意味でValveにはSteamという膨大なソフト金庫があり、そのマスターキーを握っているのは大きいだろう。

さらにSteamはソフト以外にも、ゲーム機に役立ちそうなコントローラーの設定やフレンドと遊ぶための機能が充実しているのも大きい。

特に、実際ゲーム機が発売されると強力な機能になる「リモートプレイトゥギャザー」はSteamゲーマーの間で認知されており、2021年3月には大規模セールも行われた。

Switchのようにゲーム機を外で持ち寄って対戦したり協力プレイする光景を容易に想像できるし、リモートプレイトゥギャザーによりソフトのコストを最小限に抑えられる(ホストがソフトを所有していればいい)のはSteamPalの強みではないかと思う。

考えてみると、リモートプレイトゥギャザーやProtonの開発はすべてこのゲーム機のための試運転だったのではないだろうか。

いずれにせよValveがSteamというPCゲーマーが集うプラットフォームをすでに持っていることは非常に大きなアドバンテージになるだろう。

「SteamPal」の発売日は?

「Proton」をValveと共同開発しているCodeWeaversのRamey社長は2020年11月にProtonの転換点が「今後1年以内にやってくる」と発言していた。

Valveのゲイブ・ニューウェル氏は2021年5月の学生向け講演会で「Steamゲームをコンソールで発売するか」という問いに「今年の終わりまでに、そのことについてもっといいアイデアに出会える。そして、それはあなたが予想していないものになるでしょう。」と今回の報道の裏付けになる発言をしている。

「今年の終わりまでに……アイデアに出会える」という表現から恐らく今回のゲーム機の発表がなされるものと思われるので、発売となると少なくとも2022年になるだろう。

任天堂Switchも2016年10月発表、2017年3月発売と5か月、PS5は2019年10月発表、2020年11月発売と1年になるからだ。

さらにVALVE INDEXが2019年3月末に発表され、同年6月28日に海外発売された時、国内販売が開始されたのは同年11月28日と5か月後の事だ。

従って発表から発売まで半年、国内販売に半年というおおよその経過をたどるなら2023年初頭になる可能性もある。

いずれにせよ、Valveがどの程度開発しているかにもよるが、他の類似品と完全に差別化されたSteam専用携帯ゲーム機が誕生することだろう。

これが事実ならVALVE INDEXよりもワクワクする出来事ではないだろうか。

発売されることを期待し、とりあえずいつでも入るように仕事カバンのポケットは空けて持つことにしよう……。